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広島大学ダイバーシティ研究センター

性の多様性についてのQ&A

日本はLGBT差別がないんじゃない?オネエ・タレントも多いし。
 活躍している有名人がいるとしても、一般の職場、地域や家庭では当事者の存在が認められなかったり、尊厳が十分に理解されていなかったりします。
 学校でのいじめやからかい、職場での差別や無理解に遭うことも多くあります。
 性自認や性的指向による差別を禁止するような法制度も十分ではありません
男女共同参画と性の多様性は矛盾しませんか?
 「男女共同参画」や「ジェンダー平等」政策は、性別にかかわらず、個人の尊厳が重んじられ、ひとりの人間としてのびのびと活動できる社会になることを目指しています。したがって、性の多様性を尊重する政策と目指すものは同じです。
 現状では、男女の格差がさまざまな分野で生じているため、過渡的に、積極的差別是正措置(ポジティブ・アクション)として、目標を定めて女性の管理職割合を上げる等の対策を取る必要があります。それが「女性の活躍」など「女性」カテゴリーを強調し固定化しているかのように見えるかもしれません。しかし、それは男女格差がなくなるまでの間において必要なことです。
教職員として、学生生徒や患者、施設の利用者などからLGBTだと打ち明けられました。どうすればいいですか?
 男女の枠にあてはまらない人々は、現代の社会では様々な生きづらさや制度の利用のしづらさなどに直面することが少なくありません。
 あなたが教職員として、配慮しなければならないことを本学ガイドラインで確認し、また、ご本人に気がかりな点、要望などを率直にきいて対応しましょう。
多目的トイレは誰でも使っていいの?
 多目的トイレとは、多様な目的で使えるトイレで、車椅子利用者、オスメイト、乳幼児連れ等の人が使える設備などを備えています。基本的には誰が使っても問題ありません。ただし、数が限られており、そこしか使えない人がいるので、他の利用者が困らないよう譲り合って利用しましょう。
ゲイと「ホモ」は違うの?
 「ホモ」は侮蔑的な表現です。
 他にも「オカマ」「レズ」という呼び方は、これまで侮蔑的・差別的な使われ方をされてきたので、使いません。
LGBTの人たちに具体的にどんなことをしたらいいの?
 まずは性のあり方は人それぞれで多様であり、職場や大学にも男女の枠に当てはまらない人がいるという意識をもちましょう。
 性的指向や性自認などを否定的・嘲笑的に話題にするようなことはもってのほかですが、異性愛でシスジェンダー(心と体の性が一致している人)を前提にしないこと、性別や性的指向を決めつけないことも必要です。
 そして、職場や大学の講義などの中で、不必要に性別が顕在化するような名簿の扱いをしていないか、プライバシーの侵害になっていないかも意識しましょう。異性愛・シスジェンダーのマジョリティ以外の人には答えにくい授業での問いかけや課題設定にならないよう、配慮することも大切です。(くわしくは「ガイドライン」を参照してください。)
レスビアン・ゲイと、トランスジェンダーは違うの?
 ゲイの人に対して、「男性のあなたが男性を好きだということは、女になりたいんですよね」という誤解をする人がしばしばいます。その誤解のもとは「好きだ」ということ(性的指向)と「自分がこうだ」(アイデンティティ、性自認)とが混同されているからです。
 同性愛の人とは、同性に性的にひかれる人のことです。男性だと自認している人が男性を、女性だと自認している人が女性にひかれるのであれば、同性愛です。
 トランスジェンダーとは、生まれたときに割り当てられた性別に違和感を持ち、なんらかの意味で「男である」「女である」という割り当て区分を越境し、枠組みからはみ出す個性を持つ人のことです。これは、性自認の問題です。
LGBTって生まれつきなの?
 性自認や性的指向がどのようにして作られるかは、とても深い問題で、まだ十分に解明されてはいません。
 ただ、わかっていることは、性自認や性的指向の面で、マイノリティの人がある程度の割合では存在しているということ、またそれは自分の気持ち次第で簡単に変えたり、自由にやめたりできるものではないということです。
 この社会には左利きの人もいます。昔は無理に右利きに矯正しようという風潮もありましたが、今日では否定せず、個性として見る人が多くなってきています。同じように、性的指向や性自認も「自分では簡単に修正したりできない個性」というように見ることもできるかもしれません。
同性愛や「性同一性障害」は病気なの?
 何を「病気」「異常」とみるかは、国や時代によって変わっていきます。現在では、「同性愛」も「性同一性障害」も、治療しなければならないという意味での「病気」ではありません。歴史上、過去には、同性愛は「異常」「病気」とされたことがありました。しかし、現在では、精神医学分野の主要な機関や専門家が用いる診断基準・疾病分類では同性愛を「異常」「倒錯」「精神疾患」とはみなさず、治療の対象とはみていません。
 性自認について、本人が苦痛や困難を感じている状態については、「性同一性障害(Gender Identity Disorder)」という診断名がつきます。しかし、それは特別な原因による特定の病気・障害という意味ではありません。性同一性障害・トランスジェンダーの人々の場合、医療的な処置を必要とするときには「診断名」をもつことになる場合もあります。しかし近年、アメリカ精神医学会(APA)や世界保健機構(WHO)の国際疾病分類(ICD11)では、「Gender Dysphoria(性別違和)」や「Gender Incongruence(暫定的な日本語訳は「性別不合」)」と呼ぶようになり、「病気」とは少し違うものとして見る動きが出てきています。
 大学では、医療的な診断のあるなしにかかわらず、配慮をします。その「配慮」や支援は、「障害があるから」「診断があるから」されるというものではなく、大学で学び働くすべての人の人権や尊厳が守られなければならないという観点からなされるものです。
ゲイって誰でも恋愛対象にする人たちなんでしょ?
 同性愛の人とくに男性同性愛者(ゲイ)に対しては、過剰に「性的」な人たちだという偏見が広くあります。ひとりの人間がもつ多くの側面のうち、性的指向という部分のみが着目され、歪んだイメージが生じています。「あなたがゲイであるのは構わないけど、私のことはねらわないで」というセリフは、男性であれば誰でもゲイの人の恋愛対象になるという間違った認識です。このセリフは、異性愛である「あなた」が異性であれば誰でも恋愛対象なんだと言っていることと同じです。
 異性愛であっても同性愛であっても、好きになる人は人それぞれです。